「親日」というイメージが強い台湾ですが、現地での生活が始まるとなると、台湾人の新たな一面を見て驚くこともあることと思います。
だからこそ、まずは相手の生活習慣を知っておくと、コミュニケーションもスムーズに行くかもしれません。今回は、筆者自身が知らずに失敗して後悔した3つをご紹介してみたいと思います。どうか、皆様のお役に立ちますように。
心砕かれる「蛤?」
おしゃべりの途中で習慣の違いにびっくり!なんていうこともよく起こります。
台湾人の友人や同僚たちと少しずつ会話ができるようになった時、まずほとんどの日本人がびっくりするのが台湾人の「蛤?」という返しだと思います。
中国語のニュアンスとしては、単に聞き取れなかったので「何?」とか「え?」といった感じで使われているのですが、何せ発音が「はぁ?」であり、しかも怒ったような表情で眉間にしわを寄せて言われるため、私のように内気な人間は心がバキバキに砕かれることでしょう。
しかも日本では一部の層しか使わないこの言葉を、台湾では美人で優しい女性も使うから、そのギャップたるや相当なもの。
そして「蛤?」と同じくらいガラスのハートを砕くのが、ちょっと面倒なこと、複雑なことを依頼した時に「舌打ち」されること。こちらも当の本人たちは悪意がなく、単純に「面倒だな」「えーと、どれどれ」くらいしか思っていない場合が多いので、気にせずスルーしてしまって大丈夫です。
もしあなたが「そんなの全然気にならない」という強靭なハートの持ち主でしたら、それに越したことはないと思います。私は何年も知らないまま台湾で生活し、心を砕かれ続けていたため、後から知った時には頭がクラクラしました。あらかじめ相手に悪意がないことが分かるだけでも、きっと救いになるのではないでしょうか。
昼食と昼寝はセット。
台湾での留学生活が始まると、「お昼休みになると学校の電気が消えるんだな」ということに気付くかもしれません。そう、ここ台湾ではお昼休みの食事と休憩(=昼寝)はセットで、必要不可欠なものなのです。一部の帰国子女やワーキングホリデー経験者などを除き、ほとんどの台湾人が昼寝の習慣を持っています。幼稚園から小学校、さらには懲役の軍隊生活まで昼寝が生活の中に定着しているから、逆に昼寝しないと午後に集中力が持たないという人が多いようです。
私たちが台湾で暮らすにあたり、諸手続きでお世話になるお役所系でもお昼休みを設けていることが多いので、そこも知っておいたほうが良いでしょう。
観光ビザではなく、居留証を作って長期滞在する場合などにお世話になるのが「中華民國內政部移民署 臺北市服務站」、通称「移民局」。こちらはありがたいことに昼休みのクローズがありません。
ただ、パスポートの更新など、諸手続きでお世話になるのが大使館的な存在の「公益財団法人日本台灣交流協會 台北事務所」。こちらは昼休みの時間帯はクローズします。営業時間は窓口によって異なるので、ホームページで確認しましょう。
台湾で納税する場合にお世話になる「財政部臺北國稅局」も、昼休みの時間帯はクローズしています。窓口によって営業時間が異なるのでホームページで確認を。
余談ですが、台湾のローカル企業では、お昼休みを一時間半設けている企業も多いので、企業訪問や電話をするなら正午から13時か13時半くらいまでの時間帯は避けた方が良いでしょう。
ちなみに、ローカル企業で働いていると、お昼休みの時間に日本から電話がかかってくるとお昼寝中の同僚を起こしてしまうので、会議室などで受けることになります。
さらに余談になりますが、以上は主に授業や仕事中の様子です。なぜか休みの日には平日以上にアクティブになるのが、台湾人の愛すべきところ。日本旅行なんて行ったら私も卒倒するくらい充実したスケジュールで行動しています。
IQよりもEQを重視。
最後に紹介するのはあくまで私の個人的な印象ですが、台湾人は「IQ(知能指数・intelligence quotient)」の高さよりも「EQ(感情指数・Emotional Quotient)」の高い人を評価する傾向にあると思います。
これは私が台湾ローカル企業に勤務したり、台湾で育児をしながら他の親たちの振る舞いを見ていて気付かされたことです。
例えば、職場では「人前で部下を叱ってはならない」というのが台湾における通説です。
メンツを大切にする台湾人は、どんなに賢かろうが、人前で相手のメンツを潰すような人のことを尊敬しません。
「自分の感情を自分でコントロールできないような人は、人の上に立つことなどできず、リーダー失格」という見方が強いように見受けられます。
恥ずかしい話、これは私自身が職場の部下をみんなのいる場所で叱ってしまった後、他の台湾人スタッフからこっそり教えてもらったという、実に痛い経験から学んだことです。
こういった話は、役職付きで駐在となると部下から教えてもらいにくくなるので、留学中によりたくさんの台湾人と交流し、友人として教えてもらうに越したことがないように思います。
公共の場においても同じことが言えます。日本を離れて8年ほど経つので時代が変わっているかもしれませんが、筆者の記憶では、日本で電車が遅れると駅で怒りを駅員にぶつける社会人たちの姿をよく見かけました(もちろんSNS以前・以後ではムードも異なるとは思いますが)。
一方、台湾では「駅員の皆さんお疲れさまです」といったムードの方が強く、少なくとも駅員に向かって怒るような人を見かけたことはありません。
ちなみにこれは別に「日本と比べて」といった相対的なものではなく、台湾人はもともと権力やお金といったものともうまく付き合いながら、「心」をとても大切にします。
様々な国に統治されてきた台湾が持つ独特の歴史的な背景もあって、そのような土壌があるのではないかというのが私の所見です。
写真は人情味あふれる迪化街。旅行で台湾人の心の優しさに触れて台湾を好きになった方も多いのではないでしょうか。
まとめ
外国への語学留学の醍醐味は、言葉の上達が早いというだけでなく、月並みですが異文化の中で生活することにより視野が広がることにあると思います。日本でこれまで信じていた「当たり前」が、全く当たり前ではなかったことに気付いたり、現地の人々の生活習慣を見て感じ入るところはさまざまあるでしょう。この、異文化と出会った時の感覚を大切にすれば、留学以前と以後のあなたに見える世界はきっと大きく変わっているはずです。
文・写真/近藤弥生子